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第1回特定技能制度及び育成就労制度の基本方針及び分野別運用方針に関する有識者会議のまとめ

第1回特定技能制度及び育成就労制度の基本方針及び分野別運用方針に関する有識者会議のまとめ

2027年からの育成就労制度運用開始を見据え、日々有識者会議にて運用方針に関する詳細事項が検討されています。
本コラムは2025年2月に開催された第1回有識者会議の内容と、有識者会議を踏まえて士業の皆様に押さえていただきたいポイントを、国際業務分野専門のコンサルタントからお伝えいたします。

※この記事は2025年8月時点の記事です。詳細については原典である有識者会議の議事録をご確認ください。

有識者会議の内容について

1. 会議の概要

2025年2月6日に、育成就労制度と特定技能制度の基本方針及び分野別運用方針に関する有識者会議が開催されました。会議の目的は、2024年6月に成立した入管法等改正法に基づき創設された育成就労制度と、既存の特定技能制度の適正な運用に向けて、有識者の意見を踏まえて基本方針及び分野別運用方針を作成することです。

2. 基本方針(案)に関する主な議論

基本方針(案)は、現行の特定技能制度の基本方針を基に、育成就労制度に関する記載を追加し、両制度を一つの文書としてまとめたものになります。

・在留期間の例外
 ○特定技能1号の在留期間(5年)の上限について、以下の2つの例外が検討されました。
  1.妊娠・出産に係る期間等を5年の計算に含めないこと。
  2.特定技能2号への移行試験に不合格となった場合、再受験に必要な範囲内で最長1年間の在留継続を認めること。

・転籍制限と待遇改善
 ○有識者より
  1.育成就労制度における転籍制限に関して、待遇向上を図る際に「一定の」最低限の水準を記載すべきだという提案がありました。
  2.また、転籍要件として、就労開始1年以内に求められる日本語能力(A1)に加え、さらに上のレベル(A2)を課すのはハードルが高く、転籍を認めない結果になりかねないと指摘がありました。

・地方・中小企業の人手不足
 ○有識者より
  1.大都市圏等に過度に人材が集中しないよう配慮に努める一文を評価しつつ、地方中小企業が外国人材に選ばれる企業になるための前向きな取り組みを政府が後押しする制度設計を求める意見が示されました。
  2.一部の市町村で外国人材の人口比率が増加しており、外国人材の受入れは労働政策の枠を超えた「地域を持続させていくための」重要な課題であるという意見が示されました。
  3.国と地方の役割分担の整理や、それに伴う財政措置の必要性も訴えられました。

・実地調査と法令遵守
 ○有識者より
  1.特定技能制度においても、技能実習制度並みに定期的な実地調査を行い、法令遵守状況を継続的に確認する必要があるという意見が示されました。

3. 分野別運用方針(案)に関する主な議論

緊急性が高いと判断された以下の3分野について、既存の分野別運用方針の改正が提案されました。

・介護分野
 ○改正内容: 介護分野の特定技能外国人が、一定の条件下で訪問系サービスに従事することを認める案が示されました。
 ○有識者より:訪問介護におけるハラスメントのリスクを指摘し、実務経験や高い日本語要件、同行指導、伴走型支援ができる相談体制の整備などが必要という意見が示されました。

・工業製品製造業分野
 ○改正内容: 技能評価試験の運営などを担う、事業者や業界団体が加入する新たな民間団体を設置する案が示されました。
 ○有識者より:賃上げ要件が団体の加入ハードルとなり、かえって不適切な取組につながる可能性を指摘し、慎重な検討を求めました。また新たな団体が徴収する会費が事業者の経済的負担となる懸念も示されました。

・外食業分野
 ○改正内容: 旅館・ホテルにおいて風営法の許可を受けている場合でも、外食業分野の特定技能外国人の就労を認める案が示されました。
 ○有識者より:「接客」と「接待」の区別が曖昧であり、言語的に脆弱な立場にある外国人が接待行為に巻き込まれる懸念があるため、厳格な運用が必要であるという意見が示されました。

船井総研のコンサルタントからのコメント

外国人雇用に係わる士業の先生方に押さえていただきたいポイントについて、解説させていただきます。
1.有識者会議のスケジュール把握
これからも、有識者会議は月に1回程度のペースで開催され、今回のように出入国在留管理庁ホームページにて、議題の資料が公開されます。毎回の会議において議題も異なり、新たな方針が決定していきますので、ぜひサイトをこまめに確認いただければと思います。

2.特定技能における在留期間の例外
育成就労制度の創設に伴う有識者会議ではありますが、すでに運用が進んでいる特定技能制度についても、今回の有識者会議では変更点が追加されています。理由としては、育成就労の在留資格は、その後特定技能へと移行することを見据えて創設される在留資格であるためです。特定技能制度を活用している企業は多くありますので、変更点について押さえておくことは必要不可欠です。
今回の会議においては、妊娠又は出産に係る期間が、特定技能1号の通算在留期間上限(5年)から除外する方針となりました。現在の制度では、技能実習では通算在留期間から除外されているにも関わらず、特定技能では除外されていないという齟齬が生じていたため、技能実習(育成就労でも同様の運用となる予定)の運用に合わせる形で、特定技能においても制度の変更が行われる方針となりました。在留期間の計算は、不法就労にもつながりやすいポイントになりますので、ぜひ把握しておきましょう。

3.特定技能既存3分野における運用方針の変更
今回の有識者会議において、特定技能制度についても運用方針の変更が検討されました。工業製品製造においては、特定技能人材を受け入れるための運用が変化する見込みとなっており、外食・介護分野においては対象となる業務・業種が拡大になります。
このような最新情報について、士業の先生方にはぜひキャッチアップをいただき、日々の業務に活かしていただければと存じます。

今回のコラムについては、第1回有識者会議の議事録をもとにまとめております。
出典:出入国在留管理庁のホームページhttps://www.moj.go.jp/isa/03_00117.html

ぜひ先生方も上記の原典もご覧いただけますよう、お願いいたします。

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